はじめに
暗号資産の世界では、「期限のない先物取引」を意味するperp(パーペチュアル、無期限契約)を扱う分散型取引所(DEX)が、この数年で急速に存在感を増しています。HyperliquidやAsterといったサービスがその代表例ですが、2025年後半、Solanaブロックチェーンの共同創業者であるAnatoly Yakovenko氏自身が、Solana上で動く新しいperp DEXの設計を公開したことが話題になりました。そのプロジェクトの名前がPercolator(パーコレーター)です。
本記事では、Percolatorがどのような技術的な仕組みを持つプロジェクトなのか、現在の開発状況、そして利用や情報収集をする際に特に注意すべき点を、公開情報に基づいて整理します。
なお、本記事は特定のサービスへの登録や利用を勧めるものではありません。暗号資産関連サービス、特に未ローンチ・未監査のプロトコルの利用には高いリスクが伴うため、最終的な判断はご自身でお願いします。
Percolatorの基本的な仕組み
Percolatorは、Solana上で動作する分散型のperp(無期限先物)取引プロトコルです。利用者は、SOLのような資産に対してレバレッジをかけたロング・ショートのポジションを取ることができ、ポジションには期限がなく、担保は共有のボールトに保管され、価格はChainlinkやPythといったオラクル(外部の価格情報源)から取得される設計になっています。
技術的な特徴として、1つのプログラムが市場の状態をすべて「slab(スラブ)」と呼ばれる単一のオンチェーンアカウントに保持し、外部の「マッチャープログラム」が取引の価格付けの方法を定義するという構造を採っています。これにより、標準的な市場だけでなく、反転した市場やパッシブなLP(liquidity provider、流動性提供者)、カスタムのAMM(自動マーケットメーカー)的な価格設定など、柔軟な市場設計が可能になるとされています。
もう少し分かりやすく言うと、Percolatorは「誰でも、Solana上の任意のトークンに対してperp市場を作れる土台」を目指しているプロジェクトです。通常、perp取引ができる銘柄は主要な暗号資産に限られますが、Percolatorの設計では、Solana上の新しいトークンやミーム銘柄に対しても、比較的早い段階でperp市場を立ち上げられる可能性がある点が注目されています。

誰が、なぜ作っているのか
Percolatorを理解する上で重要なのは、これがSolana共同創業者であるAnatoly Yakovenko氏自身の手によって設計・公開されたプロジェクトだという点です。Yakovenko氏は「Percolator」という名前のGitHubリポジトリを公開し、Solana上に構築された自己管理型(セルフカストディ)のperp DEXとして説明しました。
その設計思想には、業界の競争環境が背景にあると報じられています。この発表は、HyperliquidというDEXが、第三者が独自にperp市場を立ち上げられる仕組みを導入した直後に行われました。さらに、VanEckの調査によれば、HyperliquidがSolanaから高価値のユーザーを奪い、定着させているという指摘もあり、Solanaエコシステムとして、ネイティブな高性能perp DEXを持つことが戦略的に重要だと考えられている背景があります。
プロトコルは、担保管理とクロススラブのルーティングを担う「Router」と、複数のマッチングエンジンである「Slab」という2つの主要なオンチェーンプログラムで構成されています。こうした「sharded(分割された)」設計により、複数の市場をまたいだポートフォリオマージンを使うことで、ネットの持ち高がゼロであれば追加の担保なしで相殺ポジションを実行できるという、高い資本効率を実現しようとしている点も特徴です。

現在の開発状況
ここが、Percolatorを評価する上で最も重要なポイントです。Percolatorは、2026年時点でもまだ実験段階のプロジェクトです。
プロトコルは実験的であり、未監査(unaudited)であるとされ、教育・テスト目的に限定されており、本番環境や実際の資金での利用は想定されていません。また、公式なローンチの日程はまだ発表されておらず、清算エンジンのような重要なコンポーネントも開発中とされています。
つまり、Percolatorは「すでに取引ができる完成したサービス」ではなく、「設計とコードが公開された、開発中のオープンソースプロトコル」という段階にあります。この点を理解せずに、実際の資金を投じて取引できるサービスだと誤解することは避けるべきです。
紛らわしい名前のサイトに関する重要な注意
Percolatorについて調べる際、特に注意が必要なのが、似た名前を使った複数の異なるウェブサイトが存在するという点です。
公式と見られる percolator.trade のほかに、solanapercolator.vercel.app や percolatordex.live、percolatordex.org といった、似た名前のドメインがいくつも見つかります。これらのサイトの中には、すでに発行済みのトークンコントラクトアドレスを掲載していたり、「最大100倍のレバレッジ」「監査済み」「ガバナンストークンでのステーキング」といった、Yakovenko氏が公開した元の技術設計とは矛盾する内容を謳っているものがあります。元のGitHub発表では、清算エンジンすら開発中とされ、ローンチ日程も未定とされている一方で、これらのサイトは「今すぐ取引できる」かのような体裁を取っています。
これは、有名な開発者が手がけるプロジェクトの名前に便乗して、無関係の偽サービスやトークンが作られるという、暗号資産業界でよく見られるパターンに当てはまる可能性があります。Percolatorという名前で検索した際に、どのサイトが本物の設計に基づいているものなのか、慎重に見極める必要があります。具体的には、運営者情報、GitHub上の実際のコードとの整合性、ドメインの取得時期、SNSでの公式アカウントとの紐付けなどを確認することが重要です。
waitlist(早期登録)という仕組みについて
公式とみられるサイトでは、メールアドレスやウォレットを使った早期登録(waitlist)の仕組みが用意されているとされています。メールで登録した場合は、Privyという仕組みを通じて自動的にSolanaの組み込みウォレットが付与され、ウォレットで登録した場合は、署名を1回行うことで登録が完了するという説明がされています。
この種の早期登録の仕組み自体は、Web3プロジェクトにおいて一般的なものです。ただし、理解しておくべき重要な点があります。
第一に、早期登録は資金の入金や取引を意味するものではありません。 登録時に求められるのは、メールアドレスの確認やウォレットの署名であり、プロトコル自体が「実際の資金での利用を想定していない、実験的なもの」と明言されている以上、この段階で資金を投じる必要はありません。
第二に、ウォレット接続時に秘密鍵やシードフレーズの入力を求められることは、正規のサービスでは通常ありません。 ウォレットの接続は、ブラウザの拡張機能(PhantomやSolflareなど)を通じて行われ、署名の承認だけで完了します。秘密鍵やシードフレーズの入力を求める画面が表示された場合、それは偽サイトである可能性が極めて高いです。
第三に、早期登録が将来のトークン配布や優先的な利益を保証するものではありません。 Web3プロジェクトの早期登録キャンペーンでは、「早く登録すれば優遇される」という期待を煽る形で参加者を集めることがよくありますが、実際にどのような形でトークンが配布されるか、配布されるかどうか自体も、ローンチ前の段階では不確実です。
Solanaウォレット(Phantom等)についての基本知識
PercolatorのようなSolana系プロジェクトに関わる場合、Solana用のウォレット(代表的なものとしてPhantom、Solflare、Backpackなど)についての基本的な知識を持っておくことが助けになります。
ウォレットを新規作成する際に最も重要なのは、シークレットリカバリーフレーズ(シードフレーズ)の管理です。これは、ウォレット内の資産を動かすための鍵となる文字列で、これを他人に知られると資産を完全に奪われる可能性があります。スクリーンショットでの保存、クラウドストレージへの保存、他人への共有は避け、紙に書いて物理的に安全な場所に保管するなど、オフラインでの管理が推奨されます。
また、ウォレット拡張機能は、必ず公式サイトやブラウザの公式アプリストアからインストールすることが基本です。検索結果や広告から偽の拡張機能をインストールしてしまうケースも報告されているため、URLやストアの提供元を確認する習慣が重要です。
業界内での位置づけ
Percolatorは、perp DEX市場という、すでに激しい競争が起きている領域に投入される設計です。現在、この分野はAsterやHyperliquidといったプラットフォームが主導的な地位を占めており、Hyperliquidの月間取引量は非常に大きい規模に達しています。
業界関係者の間では、Percolatorが「sharded matching engines」という設計でレイテンシーや流動性の分散、取引実行といった既存のperp DEXが抱える課題に取り組んでおり、これがうまく機能すればHyperliquidの有力な競合になり得るという見方も示されています。一方で、ローンチの時期は未定であり、清算エンジンのような重要な部分もまだ開発中であるため、構想と実際の稼働には距離がある状態です。
利用・情報収集をする際の注意点
最後に、Percolatorのようなプロジェクトに関心を持つ際に意識しておきたい点を整理します。
第一に、現時点では実験的・未監査のプロトコルであるという前提を忘れないことです。本番環境での利用や実際の資金を使った取引は想定されておらず、ローンチ後であっても、未監査のコードには技術的なリスク(バグ、脆弱性、資金の損失など)が伴います。
第二に、似た名前のサイトが複数存在する状況に警戒することです。前述の通り、元の技術設計と矛盾する内容を謳うサイトが複数見つかっており、どれが信頼できる情報源なのかを慎重に見極める必要があります。GitHub上の公式リポジトリ、開発者本人のSNSアカウントなど、一次情報に近いソースを優先的に確認することが望ましいです。
第三に、早期登録や紹介プログラムにおける期待値の煽りに注意することです。「早く登録すれば優先的な配布を受けられる」といった言説は、Web3業界で広く見られるマーケティング手法ですが、実際の配布が行われるかどうか、その条件がどうなるかは、プロジェクトが正式にローンチするまで不確実です。
第四に、秘密鍵やシードフレーズは絶対に他者やウェブサイトに入力・共有しないことです。これはPercolatorに限らず、暗号資産関連サービス全般における最も基本的な防衛策です。
まとめ
Percolatorは、Solana共同創業者であるAnatoly Yakovenko氏自身が設計を公開した、Solana上で動作するperp(無期限先物)取引プロトコルです。任意のトークンに対してperp市場を立ち上げられる柔軟な設計や、クロススラブのポートフォリオマージンによる資本効率の高さなど、技術的に注目される要素を持っています。
一方で、2026年時点では実験的・未監査の段階にあり、ローンチ日程も未定です。さらに、似た名前を使った複数の紛らわしいサイトが存在することは、このプロジェクトに関心を持つ人が特に注意すべき点です。技術的な可能性と、現時点での不確実性・偽サイトのリスクの両方を理解した上で、情報収集や判断を行うことが大切です。
Web3関連のプロジェクトは情報の更新が早く、紛らわしい情報も多い分野です。利用や登録を検討する際は、本記事のような解説記事だけでなく、開発者本人の公式発表やGitHub上の一次情報を必ず確認するようにしてください。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のサービスの利用や登録を推奨するものではありません。暗号資産関連サービス、特に未ローンチ・未監査のプロトコルの利用には、資産の損失、技術的な脆弱性、詐欺サイトによる被害などの高いリスクが伴います。投資・金融に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。


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