Ethereum（メインネット）はリリースから10年以上経過しても、そのトランザクション処理速度はほぼ20TPS以下に留まっています。ブロックチェーン業界では、スケーラビリティ、速度、コスト効率の向上がますます重要になっており、Ethereumやそのロールアップだけでなく、分散性や開発者の使いやすさを損なわずにパフォーマンスを再定義できるかどうかが鍵となっています。2025年注目のプロジェクトとして、今回は【Monad】と【MegaETH】という2大プロジェクトが激突する様相を解説します。
ブロックチェーンの現状と課題
Ethereumは依然として世界中で数多くのEVM（Ethereum Virtual Machine）互換チェーンとともに存在し、その上で多くのマルチチェーンプロジェクトが展開されています。例えば、2021年から2024年にかけて、EVMベースのマルチチェーン展開者は4倍に増加し、業界全体が高速で低コストな取引処理に向けて活発に動いています。
MegaETHとは？
MegaETHは、Ethereumのセキュリティを受け継ぎつつも、従来のEthereumに比べてはるかに高速で、コスト効率を大幅に改善するLayer-2ロールアップです。以下にMegaETHの主要な特徴をまとめます。
MegaETHの注目ポイント
- 超高速シングルシーケンサー：
単一の高性能シーケンサーにより、トランザクションを1〜10ミリ秒で確定。これにより、従来のEthereumの約12秒に比べ、劇的な高速化を実現しています。
※シーケンサーの役割があるため、取引の順序と実行は極めて迅速ですが、一部中央集権的な信頼前提が伴います。 - EigenDAによるデータ可用性：
Ethereumに全取引データを保存するコストを削減するために、EigenDAというデータ可用性レイヤーを活用し、安全性を維持しながらストレージ費用を低減。 - 詐欺防止機能を備えたオプティミスティック・ロールアップ：
原則として全トランザクションは正当と仮定されるが、不正が検知された場合にはフラウドプルーフの仕組みが稼働し、Ethereumが最終的な真実のソースとなる設計。
MegaETHは、トレーダー、開発者、そして低コストかつ瞬時の取引を求めるユーザー向けに設計されており、従来のEthereumガス代の高さや取引遅延に不満を感じるユーザーに、新たなWeb3エクスペリエンスを提供します。
Monadとは？
Monadは、Ethereumの課題である速度、スケーラビリティ、コストを解決することを目的とした高性能Layer-1ブロックチェーンです。Ethereumのデザインを踏襲しつつも、完全に独立したネットワークとして動作し、Ethereum仮想マシン（EVM）との互換性も確保しています。
Monadの3大革新ポイント
- トランザクションの並列実行：
複数のトランザクションを同時に処理することで、従来の逐次処理によるボトルネックを解消。これにより、ネットワークは数千件の取引を同時処理可能となります。 - MonadBFT：迅速なコンセンサスメカニズム：
独自に開発されたByzantine Fault Tolerant（BFT）型コンセンサスプロトコルにより、ブロック確定が約1秒で実現。これは、低遅延かつ高信頼性を提供します。 - 最適化されたストレージと実行エンジン：
Ethereumの実行エンジンを一新し、効率的な取引処理と低コストなストレージ運用を実現。MonadDBというカスタムデータベースが、スマートコントラクトの実行速度とコストに革新をもたらします。
Monadは、DeFi、NFTマーケットプレイス、ゲーミングアプリケーション、そして企業向けフィンテックソリューションなど、さまざまなユースケースに対して、高速かつ低コストな取引処理を提供する次世代ブロックチェーンとして注目されています。
Monad vs. MegaETH：ブロックチェーン性能比較
両プロジェクトは、スケーラビリティと実行効率に関して全く異なるアプローチを採用しています。以下の比較表で、その違いを詳しく見てみましょう。
| 特徴 | MegaETH | Monad |
|---|---|---|
| ブロックチェーンタイプ | Layer-2（Ethereumロールアップ） | Layer-1（独立チェーン） |
| 実行モデル | シングルの超高速シーケンサー（逐次実行） | 並列実行（複数のトランザクションを同時処理） |
| コンセンサスメカニズム | オプティミスティック・ロールアップ＋詐欺防止機能 | MonadBFT（PoSに基づいたByzantine Fault Tolerantプロトコル） |
| トランザクション速度 | 100,000+ TPS | 約10,000 TPS |
| 最終確定時間 | 1〜10ミリ秒（Ethereum Layer-1の最終確定時間に依存） | 約1秒 |
| 分散化 | シングルシーケンサーによる中央集権（将来的には分散化予定） | 複数のバリデータによる高い分散性 |
| スマートコントラクト対応 | 完全にEVM互換 | 完全にEVM互換 |
| セキュリティモデル | Ethereum Layer-1によるセキュリティ | 独自のバリデータネットワークによるセキュリティ |
| ストレージモデル | EigenDAによるオフチェーンデータ可用性＋Ethereumでの最終決済 | MonadDB：カスタム高速度オンチェーンストレージ |
| ガス代 | 非常に低コスト（オフチェーンストレージのおかげ） | Ethereumよりも低いが、バリデータがストレージコストを負担 |
| ハードウェア要件 | ノードのハードウェア要件は低め。ただしシーケンサーは高性能が要求される | バリデータは高性能なハードウェア（例：32GB RAM、SSD高速ストレージ）が必要 |
| データ可用性 | EigenDA経由でオフチェーンに保管、Ethereumがバックアップ | オンチェーンにMonadDBを用いて管理 |
| ガバナンス | 現時点ではチーム主導の中央集権型、将来的には分散化を目指す | バリデータ主導のガバナンス、場合によってはオンチェーン投票システムの導入も期待 |
| 利用シーン | 高頻度取引、リアルタイムアプリ、瞬時のマイクロトランザクション | DeFi、NFT、ゲーム、高性能スマートコントラクトなど幅広いユースケース |
| エコシステム成長 | Ethereum創始者であるVitalik Buterin氏や主要投資家からの支持を受け、徐々に注目を集める | 100以上のプロジェクトがサポートを表明し、強力な開発者コミュニティを形成中 |
| 資金調達と開発状況 | 2,000万ドル以上の資金調達、Dragonfly、Robot Ventures、Vitalik Buterin氏などの支援者を持つ | 2億4800万ドル以上の資金調達、主要支援者にDragonfly Capitalなどを持ち、急速な開発とテストネット運用中 |
| ローンチ状況 | 現在プライベートテストネット運用中、2025年初頭にパブリックテストネットリリース予定 | テストネット運用中、2025年のメインネットローンチが期待される |
| 主なトレードオフ | 超高速だが中央集権的。Ethereumのセキュリティに依存している | 高速で分散化を実現するが、バリデータのハードウェア要件が高く、運用コストに注意が必要 |
各プロジェクトのアーキテクチャと技術革新
MegaETHのアーキテクチャ
MegaETHは、以下の4つの主要なノードタイプで構成されています。
- シーケンサー：
単一のアクティブシーケンサーがトランザクションの順序付けと実行を担当。これにより、合意形成のオーバーヘッドが大幅に削減されます。 - プローバー：
非同期かつアウトオブオーダーでブロック検証を行う役割。プローバーはステートレスな検証モデルを採用しています。 - フルノード：
すべてのトランザクションを再実行し、ブロックの正当性を保証。特にブリッジ運営者やマーケットメーカーなど、迅速な最終性が求められるシナリオに有用です。 - レプリカノード：
シーケンサーからの状態更新をP2Pネットワーク経由で受信し、自身のローカルステートに適用します。
また、EigenDAと新たなステートトライを活用することで、ハードウェアリソースが限られた環境でも大量のデータを低コストで管理可能にしています。
Monadのアーキテクチャ
Monadは、従来の逐次処理のボトルネックを打破するために、トランザクションの並列実行とパイプライン処理を導入しています。
- 並列実行：
異なる状態に影響を与えない複数のトランザクションを同時に処理することで、処理速度を大幅に向上させます。 - MonadBFTコンセンサス：
高速かつ信頼性のあるコンセンサスプロトコルにより、各ブロックの確定までの遅延をほぼ1秒に抑えます。 - MonadDB：
独自に開発された高速なキー・バリューストア型データベースで、ディスク上のデータ管理を最適化。並列処理と非同期I/Oにより、数千TPSの更新にも対応可能です。
これにより、MonadはEthereumのエコシステムを損なわず、独自の速度とスケーラビリティを実現しています。
開発者エコシステムとコミュニティの動向
MegaETHの取り組み
MegaETHは、開発者向けのツールや言語がEthereumと同一であるため、既存のEthereum開発者が容易に参入できるメリットがあります。2024年後半から2025年前半にかけて著名な暗号通貨関係者（Ethereum共同創設者のVitalik Buterin氏をはじめ）が注目し、コミュニティでの話題性も高まっています。
また、パブリックテストネットのローンチに合わせ、開発者向けの助成金、ハッカソン、そして「MegaMafia」と呼ばれるコミュニティイニシアティブが積極的に展開されています。
Monadの取り組み
一方、Monadはすでに100以上の既存Ethereumプロジェクトがそのサポートを表明するなど、強力な開発者コミュニティを背景に勢いを増しています。2022年にはDragonfly Capital主導で1900万ドルのシードラウンドを獲得し、創業チームには伝統金融と暗号通貨業界で実績のあるエンジニアが参加しています。
さらに、Ethereum RPC APIやEVMバイトコードの完全サポートにより、開発者が既存のウォレット（MetaMaskなど）やブロックエクスプローラーをそのまま利用できる環境も整えています。公式ドキュメントやGitHubでのオープンソース展開も、採用促進につながっています。
結論：それぞれのプロジェクトが示す未来
MonadとMegaETHは、ブロックチェーンのパフォーマンス向上を目指す上で異なるアプローチを取っています。
- MegaETH
- 超高速な取引処理（100,000TPS超）を実現し、トレーディングやリアルタイムアプリケーションに最適。
- 現在はシングルシーケンサーによる中央集権的な面があるものの、Ethereumのセキュリティを背景にしており、将来的な分散化にも期待が持たれています。
- Monad
- 分散性を保ちつつ、並列処理や独自のコンセンサス、最適化されたストレージ技術により、約10,000TPSの高スループットを達成。
- Ethereumのエコシステムをそのまま活用できるため、DeFi、NFT、ゲーミングといった多岐にわたるユースケースに対応可能。
両プロジェクトは、ブロックチェーンの利便性とパフォーマンスを高めるための異なる解決策を提示しており、将来的にはユーザー基盤と開発者コミュニティがどのように成長するかが注目されます。どちらのアプローチも、分散型プラットフォームが現実世界のニーズに応えるための重要な一歩となるでしょう。
【まとめ】
Ethereumの限界を克服するため、MegaETHとMonadはそれぞれ異なる技術的アプローチを採用し、ブロックチェーンの未来を切り拓こうとしています。どちらのプロジェクトも、高速なトランザクション処理、低コスト、そして開発者やユーザーに優しい環境を提供することを目指しており、今後の動向から目が離せません。現在はどちらもテストネットを展開中なので、今後莫大なエアドロップに期待しています。
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